C型慢性肝炎の治療
C型肝炎ウイルス(HCV)が発見されたのは1989年(平成元年)です。当初はインターフェロン単独療法がおこなわれましたが、治療成績はあまり良くありませんでした。2004年12月に、ペグインターフェロンとリバビリン併用48週間が保険適応となり、約6割の患者さんでHCVが排除できるようになりました。
さらに、2013年12月ペグインターフェロンとリバルビンとシメプレビル併用24週間が保険適応となり、9割の患者さんでHCVが排除できるようになりました。
そして2014年9月経口2剤DAAs(ダクルインザ・スンベプラ)24週間が保険適応となり、インターフェロンなしの経口剤だけの治療が始まりました。
その後、次々と経口剤(DAAs)が保険適応となっています。
そして遂に
2018年3月、HCVRNA Ⅰ型も II型も 慢性肝炎と代償性肝硬変症は 一種類だけの経口剤で 治療出来るようになり、なおかつ98%以上完治することが出来るようになりました
C型慢性肝炎とはどんな病気か
C型慢性肝炎はC型肝炎ウイルスの感染により肝臓が持続的に障害される病気です。ほとんどの場合、慢性肝炎では特別な自覚症状はなく、健康な方と全く変わらない生活が送れます。しかし、慢性肝炎は自然に治癒することはなく平均20〜25年で肝硬変へ進展します。肝硬変に進展するとさまざまな症状(黄疸、腹水、食道静脈瘤など)が出現します。さらに肝硬変まで進むと、年間7%の確率で肝臓癌が発症します。C型肝炎ウイルスと肝臓癌との関係は、たばこと肺癌との関連よりはるかに高い関連があります。C型慢性肝炎の治療の目標は、C型肝炎ウイルスを排除し、肝硬変・肝臓癌への進行を阻止することです。
C型慢性肝炎の治療対象と治療戦略
C型肝炎ウイルスに感染していることより肝炎を発症している患者さん(慢性肝炎)は、全員が治療の対象です。特に血液中のGOT、GPTが30 IU/ℓ 以上の異常高値の場合は治療が必要です。 GOT、GPTが高いということは肝臓の細胞が破壊されていることを意味し、肝炎から肝硬変、肝臓癌への進行が早いことを意味します。
C型慢性肝炎の治療は、病気の原因であるC型肝炎ウイルスを体内から排除してウイルス感染治癒をめざす抗ウイルス療法(原因療法)と肝臓の細胞を保護して肝炎の沈静化をめざす肝庇護(かんひご)療法(対症療法)があります。
なお、治療方法の選択・適応は複雑で、絶えず進歩していますので、下記に解説をしておきますが、外来受診時にその時点で最新で最適な治療方法について御説明致します。
インターフェロン療法
抗ウイルス療法としては従来はインターフェロン療法(週3回注射)のみでしたが、2001年12月よりインターフェロンとリバビリン(内服抗ウイルス薬)との併用療法、2004年12月よりペグインターフェロン(週1回注射)とリバビリン併用療法が行えるようになり、約60%(100人治療して60人がウイルスを排除)の効果が得られるようになりました。
その後、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法(二剤併用療法)、 ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビル併用療法(三剤併用療法)などが行われていました。
最近では C型慢性肝炎に対する治療の第一選択は、DAAs(経口剤)となってきました
DAAs経口剤療法
最近ではC型慢性肝炎に対する治療の第一選択は、DAAs(経口剤)となってきました
2014年9月以降、DAAs(経口剤治療)が 続々と保険に収載されています。特に腎機能や併用薬剤に厳重な制限がありますので肝臓専門の判断と専門的な治療の遂行が重要です
Ⅰ型のHCVには マヴィレットや ハーボニー配合錠が最適な選択肢となりました。
著効率(完治の率)は98%以上となりました
Ⅱ型のHCVには マヴィレットや ハーボニー配合錠が最適な選択肢となりました。
著効率は98%以上となりました
又最近、C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変またはC型非代償性肝硬変までを対象として エプクルーサ配合錠が使用できるようになりました。
腎障害や一部の薬を内服している人には投与できません。妊娠、授乳は避ける必要があります
マヴィレット®配合錠について
すべての主要なジェノタイプ(GT1~6型)に対するC型慢性肝炎および代償性肝硬変治療薬「マヴィレット®配合錠」(グレカプレビル/ピブレンタスビル)
- 「マヴィレット®配合錠」は、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)未治療*のジェノタイプ1型および2型のC型慢性肝炎に対しては、8週間治療が可能(そのほかは12週間)
- HCV患者さんの大多数を占めるジェノタイプ1型および2型の患者群において99%のウイルス学的治癒率
- 当院では 指定の期間、内服継続できれば90才超えの高齢者でもほぼ100%完治出来ています
ハーボニー配合錠®について
HCVRNAジェノタイプⅠ型のでとII型の C型慢性肝炎とC型代償性肝硬変患者に使用されます。
著効率も95%を超えるようになりました
治療期間は12週間です。
腎機能障害者や すでに内服している薬との相互作用など、特別に注意すべき事項もありますので、専門医の選択に従うことが大切です。
詳細は、お問い合わせください。
肝庇護療法
グリチルリチン配合剤(強力ネオミノファーゲンC)、ウルソデオキシコール酸(ウルソ)などがあります。これらの薬剤は肝炎の沈静化を目的としたもので、ウイルスを排除する効果はありません。また、最近、除鉄療法(瀉血(しゃけつ);血を抜くこと)をGOT、GPTの改善目的で行いますが、この治療法もウイルスを排除する効果はありません。
C型慢性肝炎抗ウイルス治療の効果判定
C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療の成績はこの10年間で飛躍的に向上していますが、治療を受けた全ての患者さんでウイルスの排除ができるわけではありません。
治療効果を
- 完全著効 SVR(インターフェロン治療後もウイルスが血液中陰性を持続する)
- 不完全著効 PR(治療中血液の中で陰性であったウイルスが治療終了後に再び出現するが、GPTは正常値を持続する)
- 一過性有効 TR(治療中血液の中のウイルスが消失し、GPTが正常化するが、治療終了後にウイルスもGPTも元の状態に戻ってしまう)
- 無効 NR(治療中、血液中のウイルス消失もGPTの正常化も得られない)
に分けて判定しています。
最終的にウイルスが排除できなかった時の治療
肝庇護(ひご)療法(ウルソ内服、強力ネオミノファーゲンC注射、瀉血(しゃけつ))を行うことになります。。
又、次々と新しい経口剤が開発研究されていますので、御紹介して参ります。