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Medical Column

肝臓の窓

肝臓の窓

肝硬変

肝硬変とは

肝炎やアルコールが原因で肝臓の細胞が破壊され続けると、再生能力の高い肝臓といえども、再生が破壊に追いつかなくなります。ちょうど家の建築のスピードと火事で家を失うスピードの関係に似ています。肝臓の中に線維が増えて固くなり、見た目にもゴツゴツした凸凹の表面になります。この状態を肝硬変といいます。肝硬変になると、肝臓内部の血液循環に異常が生じ、胆汁の流れにも障害をきたし、肝臓の本来の働きが果たせなくなります。

肝硬変の原因

お酒を飲みすぎると肝硬変になると言われています。しかし、日本人ではアルコールだけが原因で肝硬変になる人は意外に少なく、肝硬変全体の10%(中国四国地区)から20%~30%(東北地方、金沢、沖縄)ぐらいと言われています。アルコールの消費量と関連しています。日本人の肝硬変の原因として圧倒的に多いのはC型肝炎ウイルス感染による肝硬変で、全体の2/3を占めています。

肝硬変の症状

肝硬変と言っても、非常に幅広い病気です。全ての人に症状があるわけではありません。初期の頃には、ほとんど症状はありません。それは、肝臓には「代償能」という能力があり、肝臓の一部に障害が起こっても、残りの部分がそれをカバーして働くためです。しかし、その機能にも限界があり肝硬変の病状の進行とともに様々な症状がでてきます。症状のない状態を代償性肝硬変、症状のでてきた状態を非代償性肝硬変と言います。炎症が持続し、肝硬変が進行して非代償期になると、自覚症状として全身倦怠感や疲れやすい、食欲がないなどの症状がでてきます。他覚症状として黄疸や腹水などの様々な症状が現れますが、非代償期に入ったことを示す”目に見えるサイン”です。

非代償期に現れる他覚症状

他覚症状 特徴
黄疸 ビリルビンと呼ばれる色素が血液中に異常に増加することで、皮膚や白眼が黄色くなってくる症状のことです。みかんをたくさん食べると手のひらや足の裏が黄色くなることが ありますがこれは「柑皮症」と言って白眼は黄色くなりません。尿がビールより濃い色になったら白眼を見る、これが黄疸を見分けるコツです。
クモ状血管腫 胸や肩、二の腕などに、クモが足を伸ばしたような形で中央が赤く盛り上がった斑紋が現れる症状のことです。これは細い血管が拡張したものです。
手掌紅斑 手の掌の親指の付け根と小指の付け根(母指丘、小指丘)が赤くなる症状です。しかし、健康な人でも赤くなることがあるので、専門家に診察してもらいましょう。
女性化乳房 男性にだけに現れる症状です。女性ホルモンの代謝の低下が原因です。乳房だけでなく、乳首も大きくなるため、下着にこすれて痛みを訴えることもあります。さわらないようにしましょう。
出血傾向 血液を固まらせる働きのある血小板の数が低下したり、肝臓で作られる凝固因子が不足するため、一度出血すると止まりにくくなる傾向があります。血小板の減少は肝硬変の程度を知るための大事な所見です。健康な人は1mm3の血液中に20万以上の血小板がありますが、10万以下になったら肝硬変を疑います。
腹部静脈の怒張 門脈圧亢進のため、おへその周辺の静脈が拡張し、お腹の表面に青いミミズがのたうつように浮き上がります。

肝硬変の重症度の分類(チャイルド分類)

スコア 1 2 3
脳症 (-) 1or2度 3度以上
腹水 (-) 軽度 中等度
血清ビリルビン 2mg/dl以下 2.1~3mg/dl 3mg/dl以上
血清アルブミン 3.6g/dl以上 2.8~3.5g/dl 2.7g/dl以下
プロトロンビン時間 70%超 40〜70% 40%未満

Child重症度

A
スコア5〜6
B
スコア7〜9
C
スコア10〜15

肝硬変の診断

肝硬変は、血液検査や画像診断によって診断することもできますが、確定診断は腹部に小さな穴をあけて内視鏡を挿入し肝臓を直接観察する腹腔鏡検査および同時におこなわれる肝組織生検によっておこなわれます。

項目 内容
問診 自覚症状、飲酒の有無、輸血、鍼灸、イレズミ、覚醒剤常用歴などのウイルス性肝炎に感染する機会がなかったかどうかの確認を行います。
身体所見 黄疸やクモ状血管腫、腹水の有無をチェックします。腹部触診で肝臓がゴツゴツして硬度が増していれば肝硬変と診断できます。
血液検査 慢性肝炎と肝硬変の鑑別については、GOT(AST)、GPT(ALT)のどちらが高いかによって推測できます。肝硬変ではGOT(AST)がGPT(ALT)より高くなるのが一般的で、その差が大きいほど肝硬変は進行しています。
画像診断 超音波、CT、MRIなどが使われます。肝硬変では肝臓の大きさが小さくなり、肝臓表面の凸凹でゴツゴツした感じや脾臓の腫大がみられます。腹水が発見されることもあります。
腹腔鏡検査 腹腔鏡をお腹の中に入れて、肝臓の表面を直接見る検査です。肝臓表面の凸凹や萎縮が見られます。また、病理的な診断には肝生検で組織をとって調べることが必要です。

血液検査・画像診断・肝生検

肝臓病の検査」を参考にして下さい。

肝硬変の合併症

食道静脈瘤

肝臓には、門脈と肝動脈の2つの血管が入っています。

門脈は、胃や腸、脾臓などで吸収された栄養分や毒素などを含む血液を運びます。肝動脈は酸素を多く含んだ血液を運びます。肝硬変になり肝臓の線維化が進むと、肝臓内の血液の流れが阻害され、門脈内の血圧が上昇します。(これを門脈圧亢進症と言います。)門脈圧亢進症になると、腹壁の静脈や食道や胃などの細い静脈がバイパスになり、そこに大量の血液が流れるようになります。そのバイパスとなった血管は本来血液量の少ない細い血管であるため、圧力がかかり血管が膨らんでコブのようなものができます。それを静脈瘤と言います。

すべての静脈瘤が出血しやすいということはないのですが、拡張がひどくなると、破裂して大量出血することがあります。静脈瘤の破裂による出血は、大量出血になりやすい上、肝硬変による血小板やプロトロンビンの減少で血が止まりにくくなっていますので、危険な状況を招くことになります。また、大量の出血により肝臓への血液量が一時的に低下したりすると、ぎりぎり生存を支えていた肝機能が低下し、肝不全を起こすこともあります。出血した血液が腸に流れ込むと血液に含まれるタンパク質から有毒物質であるアンモニアがつくられ、出血に伴う肝機能低下と相まって肝性脳症を引き起こすこともあります。

肝性脳症 肝硬変が一段と進行すると、合併症として肝性脳症が起こります。肝臓の解毒機能が低下するため、腸管より吸収されたアンモニアを肝臓で解毒出来なくなり、全身循環にアンモニアが流入し脳に達して精神症状を起こします。これが、肝性脳症です。 引き起こされる精神症状としては、下記の肝性脳症の病期分類に記載されているような症状を認めます。
腹水 腹水が溜まる原因は、門脈圧亢進と血液中のアルブミン濃度の低下が考えられます。

肝性脳症の病期分類

Ⅰ度 睡眠-覚醒のリズム逆転、多幸、抑欝、だらしなさ
Ⅱ度 指南力(時、場所、計算)障害:この病院は? 100-7は?が正確に言えなくなる。
異常行動、傾眠(眠っているが、普通の呼びかけにより開眼し会話ができる状況)
羽ばたき振戦あり
Ⅲ度 興奮状態、せん妄状態、嗜眠(簡単な命令には応じるがほとんど眠っている
羽ばたき振戦あり
Ⅳ度 昏睡(痛み刺激には反応する)

肝硬変の治療法

  • 肝硬変の治療は患者さんのQOL(生活の質)を維持していきながら、肝硬変の進行を食い止めることを目的としておこなわれます。
  • 肝炎が起きてGPTが上昇している時は、強力ネオミノファーゲンC等でGPTを下げるべく治療します。
  • 日常生活に支障がない代償期の治療は、「規則正しい生活、バランスのとれた食事」が基本となります。定期的に検査を受ける以外は特別な治療はおこなわれないのが一般的です。
  • 非代償期では、出てきた合併症の症状を一つ一つ除去し、代償期に戻すことが最大の目標となります。非代償期の治療法は合併症の治療が主体となります。代表的な合併症には腹水、食道静脈瘤、肝性脳症があります。
腹水 水分と塩分を制限し、肝臓への負担を軽減するために適度の安静も必要となります。さらに効果を見ながら利尿剤を用いることもあります。これでも改善しない場合は、アルブミンを注射で補います。ただし、腹水を減少させる薬剤は循環血液量を減少させ肝臓には負担になるので、使っても少量ずつが原則です。少量の腹水が残っていても問題にはなりません。
食道静脈瘤 肝臓から食道静脈に逆流した血液が、バイパスになる細い静脈を怒張させ、コブのようなものを作ります。これが静脈瘤です。痛みや異物感等の自覚症状がありません。そのため、定期的な検査を受け、破裂を防止しなければなりません。静脈瘤が赤みを帯びてきたら、破裂の危険信号ですので、予防のための治療が必要になります。患部に硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう方法や、静脈瘤を輪ゴムでしばり血流を止めてしまう静脈瘤結紮(けっさつ)術などがあります。
肝性脳症 肝臓の機能が低下するため、解毒されなかった毒素アンモニアが脳に達することなどにより精神症状を起こすのが肝性脳症です。治療はまず、食事で摂るタンパク質を1日40gに制限します。そして、薬物療法に使われるのは、ラクツロースという一種の緩下剤です。これは、腸内を乳酸発酵で酸性に保ち、有害な細菌を抑えて排便を促し腸内を浄化する薬です。また、アンモニアの産生を促す細菌を殺すための抗生物質、あるいはアミノ酸バランスを調整する特殊アミノ酸製剤なども使われます。

安静について

  • 一般に立位では臥位に比べて40%近く肝血流量は低下、食後の腹部血流は増加するため、肝硬変では食後の十分な安静が理想です。食後1時間は安静が望ましいでしょう。
  • 過度の肉体労働、スポーツは避けましょう。
  • 規則正しい生活と十分な睡眠をとりましょう。

肝硬変の生活指導や治療の実際

代償期(軽症) 非代償期(中等症) 非代償期(重症) 肝性昏睡を合併した場合
状態 腹水、黄疸なく全身状態良好(チャイルドA) 軽度の腹水、黄疸があるが全身状態良好(チャイルドB) 高度の腹水と黄疸あり、全身状態不良(チャイルドC) 非代償性肝硬変に肝性の意識障害が加わった状態
管理 外来 外来 入院(病棟)一部在宅外来 入院(病棟)
安静度 日常生活の制限なし過度の運動、労働不可食後1時間安静 できるだけ臥床の生活
散歩程度は可
ベッド上安静 絶対安静
食事 高タンパク(1.5~2g/kg/日)高カロリー(40kcal/kg/日)、高ビタミン 同左 同左 絶飲絶食(軽症はタンパク質制限40g/日以下)
塩分7g/日 塩分5g/日 塩分3g/日
輸液 特に必要とせず 特に必要とせず
高アンモニア血症に対してはアミノレバン輸液
食事不能の場合はIVHによる高カロリー輸液
輸液量は前日の尿量+不感蒸泄量電解質バランス(K投与)
高アンモニア血症に対してはアミノレバン輸液
IVHによる高カロリー輸液アミノレバン500ml1~2本/日。輸液量は前日の尿量+不感蒸泄量脱水を伴う場合が多いので実際は、2,000ml/日以上、電解質バランス(K投与)アルギメート200ml 1~2本/日ドパストン
アルブミン 特に必要とせず 特に必要とせず
低アルブミン血症の患者に対しリーバクト投与
1日25g程度を数日利尿剤と併用投与、尿量、体重、腹囲、電解質、脱水をチェック
利尿剤 特に必要とせず アルダクトン25~50mg/日 アルダクトン50~75mg/日およびラシックス40~80mg/日を併用
制酸剤胃粘膜保護剤 特に必要とせず PPI又はH2受容体拮抗剤の投与、抗ペプシン剤アルサルミン3g/日、胃粘膜保護剤
消化管浄化 高アンモニア血症状に対しては、ラクツロース40~100ml投与他にラクチトールもあります ラクツロース40~100ml/、カナマイシン1~2g/日、適宜下剤、浣腸
その他 アルブミン補正利尿剤、制酸剤

肝硬変に対する外来ケアのポイント

代償性肝硬変の外来ケア

  • 指示により、安静を維持する。
  • 過激な肉体労働や、スポーツは避ける。しかし、日常生活は極力通常の生活に努める。過度の安静で筋肉量を失うことはかえってアンモニア代謝の面から不利となるので、気をつける。
  • 食後30~60分は安静にする。
  • 指示により、高タンパク(1.5~2.0g/kg)、高ビタミン、高カロリー(40kcal/kg)食とする。
  • 浮腫、腹水の予防のために、塩分制限食とする。
  • アルコール摂取を禁ずる。
  • 指示によって処方された薬の与薬。
  • 精神的援助をおこない、不安を取り除く。

非代償性肝硬変の外来ケア

  • 安静の維持を徹底する。
  • アルコールの摂取を禁じる。
  • 浮腫、腹水の予防のために、塩分制限を徹底する。
  • 指示による食事箋に基づく、タンパク、炭水化物、脂肪、塩分、水分について、栄養指導をおこなう(本人と食事をつくる人にもおこなう。)
  • 指示によって処方された薬の与薬
  • 指示通りに服用されているか確認する。
  • 出血傾向に注意する。
  • 肝機能、プロトロンビン時間のチェック
  • 便秘を避け、軟便1日2回となるようラクチュロースなどで調節する。
  • 黄疸持続中は、皮膚の保清、保護を指導する。
  • 意識状態、情緒的な状態の変化に注意する。
  • 精神的な援助をおこない、不安を取り除く。
  • 処置や検査などの説明を十分おこなう。
  • 患者にとって大切な人との関わりを支える。

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